医療機器

医療機器の受託試験


試験の実際

医療機器/生物学的安全性試験の実際


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細胞毒性試験

種々の化学物質を原料として様々な医療機器が開発されていますが、それらの中には生体内で何らかの毒性作用を示すものがあります。
細胞毒性試験は、医療機器からの溶出物やその原料化学物質による細胞死や細胞の形態変化などを指標にして、その毒性作用を評価する試験で、 すべての医療機器に必須の試験です。


コロニー形成試験

目的
試験対象となる医療機器の培地抽出液でのコロニー形成率を調べて細胞毒性作用を評価します。
使用細胞
チャイニーズ・ハムスターV79株、マウスL929株、マウスBALB/c 3T3株
概要
動物を用いる刺激性試験や急性毒性試験の代替法として用いられている高感度なin vitro試験系です。 面積(重量)に応じた量の培地で試験対象をインキュベートした抽出液中でコロニー形成試験を行います。比較対照として、 既知の細胞毒性作用を有する対照材料についても試験を行い、in vivoにおける細胞毒性作用を推測します。医療機器GLPにおいては、必須の試験法です。


直接接触試験(コロニー形成法)

目的
試験対象の上でコロニー形成試験を行い、細胞毒性を評価します。
使用細胞
チャイニーズ・ハムスターV79株
概要
試験対象となる医療機器などを一定の大きさに切断して培地に沈め、その上に細胞を直接播種してコロニー形成率を調べることにより、 より高感度に細胞毒性作用を評価できるとされています。


ティッシュカルチャー(TC)インサート試験(コロニー形成法)

目的
試験対象を入れた培養器中のTCインサート上でコロニー形成試験を行い、細胞毒性を評価します。
使用細胞
チャイニーズ・ハムスターV79株
概要
試験対象の形状や表面が直接接触試験に適切でないと判断された場合に補足として実施します。一定の大きさの試験対象を培養液を入れた培養器の底に密着させ、 その上にTCインサートを置きます。その上に細胞を播種し、試験対象との共存下でコロニー形成試験を行います。


Elution試験(サブコンフルエント法)

目的
単層培養した培養細胞に、試験対象となる医療機器等の培地抽出液を処理して細胞毒性作用を評価します。
使用細胞
チャイニーズ・ハムスターV79株、マウスL929株、マウスBALB/c 3T3株、ヒトMRC-5株
概要
培地抽出法によるコロニー形成試験と同様に試験対象の培地抽出液を作製し、サブコンフルエントに単層平板培養した培養細胞を抽出液で処理して増殖率を調べます。 増殖率は、細胞をクリスタルバイオレット染色後に単層培養細胞密度計(モノセレータ)などにより測定します。


直接接触試験(サブコンフルエント法)

目的
培養細胞を単層培養した培養器に試験対象を入れ、細胞に直接接触させた状態での細胞毒性を評価します。
使用細胞
マウスL929株
概要
サブコンフルエントに単層平板培養した培養細胞上に試験対象を置き、試験対象の周囲、下部での細胞増殖抑制を観察し細胞毒性作用を評価します。 細胞毒性作用は、細胞の形態観察により5段階で評価されます。


ニュートラルレッド(NR)試験

目的
化学物質等の細胞毒性作用を評価します。
使用細胞
マウスBALB/c 3T3株
概要
生細胞がニュートラルレッドを取り込むことを利用し、平板培養したBALB/c 3T3細胞を化学物質などで処理後、ニュートラルレッドを抽出して吸光度を調べることによって、 相対的な細胞毒性作用を評価する方法です。 光照射条件下で化学物質等を処理することにより、光細胞毒性作用を評価する目的にも用いられています。

感作性試験

医療機器または原材料が遅延型アレルギー反応のひとつである感作性を引き起こす可能性があるか否かを評価する試験です。
試験法として、Guinea Pig Maximization Test(GPMT)、Adjuvant and Patch Test(A&P)、Buehler Test(BT)、Local Lymph Node Assay(LLNA)などがあります。 医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について(薬生機審発0106第1号)や Biological Evaluation of Medical Devices - Part 10: Tests for Irritation and Skin Sensitization (ISO 10993-10)に従って実施します。


皮膚感作性試験[GPMT、A&P、BT]

動物はモルモットを使用します。試験液を一次感作および二次感作させた後、再度、試験液を24時間閉塞貼付(惹起)します。 貼付物除去後24時間および48時間に各貼付部位の皮膚反応を観察し、 紅斑および浮腫を評点付けして皮膚感作性の有無を判定します。

皮膚感作


Local Lymph Node Assay (LLNA)

動物はマウスを使用し、マウスの耳介に試験液を塗布した後、RI標識物質(3H-thymidine)を静脈内投与し、 耳介リンパ節のRI標識物質の取込量を測定することによりリンパ球の増殖が活発になっているかどうかを調べます。 評価指標としてStimulation index(SI)を用い、 同値が3以上の場合に感作性陽性と判定します。

LLNA
局所刺激性試験

局所刺激性試験は、医療機器等が生体組織と接触した場合、その局所に対してどのような影響を与えるかを評価するための試験です。


眼刺激性試験

目的
被験物質の眼組織に対する組織障害性、炎症誘起性または刺激性について調べます。
概要
臨床での使用方法で被験物質が眼組織に接触する場合の組織障害を検出する試験です。点眼方法および試験期間は臨床での使用方法を考慮して設定します。 評価は暴露部位の肉眼的観察をもとに行います。
使用動物種
ウサギ


口腔粘膜刺激性試験

目的
被験物質の口腔粘膜に対する組織障害性、炎症誘起性または刺激性について調べます。
概要
臨床での使用方法で被験物質が口腔粘膜組織に接触する場合の組織障害を検出する試験です。 適用方法および試験期間は臨床での使用方法を考慮して設定します。 評価は曝露部位の肉眼的観察および病理学的検査をもとに行います。
使用動物種
ハムスター


腟粘膜刺激性試験

目的
被験物質の膣粘膜に対する組織障害性、炎症誘起性または刺激性について調べます。
概要
臨床での使用方法で被験物質が膣粘膜に接触する場合の組織障害を検出する試験です。適用方法および試験期間は臨床での使用方法を考慮して設定します。 評価は暴露部位の肉眼的観察および病理学的検査をもとに行います。
使用動物種
ウサギ


皮膚刺激性試験

目的
被験物質の皮膚に対する組織障害性、炎症誘起性または刺激性について調べます。
概要
臨床での使用方法で被験物質が皮膚に接触する場合の皮膚組織障害を検出する試験です。適用方法および試験期間は臨床での使用方法を考慮して設定します。 評価は暴露部位の肉眼的観察をもとに行います。
使用動物種
ウサギ


皮内反応試験

目的
被験物質の皮内に対する組織障害性、炎症誘起性または刺激性について調べます。
概要
臨床での使用方法で被験物質が生体内に接触する場合の皮膚組織障害を検出する試験です。評価は暴露部位の肉眼的検査をもとに行います。
使用動物種
ウサギ


コンタクトレンズ装用試験

目的
コンタクトレンズまたは消毒剤の眼組織に対する影響を肉眼的および病理学的に調べます。
概要
新規コンタクトレンズの場合は既承認消毒剤から1種を選択し、新規化学消毒剤の場合は既承認ソフトコンタクトレンズのグループⅠおよびⅣのレンズからそれぞれ1種を選択して試験します。 コンタクトレンズの装用および消毒方法、試験期間などは被験物質の臨床での使用方法を考慮して設定します。 評価は曝露部位の肉眼的観察および病理学的検査をもとに行なわれます。
使用動物種
ウサギ


その他、各種刺激性試験

陰茎刺激性試験、直腸粘膜刺激性試験などがあります。

急性全身毒性試験

目的
試験試料から生理食塩液および植物油で抽出した試験液を、それぞれ静脈内投与(生理食塩液試験液)または腹腔内投与(植物油試験液)し、 試験液中に急性全身毒性を有する物質が存在しないことを確認する試験です。
概要
医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について(薬生機審発0106第1号)や Biological Evaluation of Medical Devices - Part 11: Tests for Systemic Toxicity (ISO 10993-11)に従い、 マウスあるいはラットを用いて試験を行います。 一般状態の観察(投与直後、投与後4、24、48および72時間)、体重測定(投与後24、48および72時間)および観察期間終了後に病理解剖を実施し、 その結果をもとに試験液中の急性全身毒性の有無を判定します。

急性毒性
亜急性全身毒性試験

目的
試験試料から生理食塩液で抽出した試験液を静脈内に反復投与し、試験液中に亜急性全身毒性を有する物質が存在しないことを確認します。
概要
医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について(薬生機審発0106第1号)や Biological Evaluation of Medical Devices - Part 11: Tests for Systemic Toxicity (ISO 10993-11)に従い、 ラットを用いて試験を行います。また、埋植試験と反復投与による全身毒性試験を同時に実施する試験も可能で、この場合ウサギなどの非げっ歯類を用いることもあります。
投与は毎日行い、投与前後に一般状態を観察し、定期的に体重および摂餌量を測定します。また、眼科学的検査、尿検査、血液学的検査、血液生化学的検査、器官重量測定、 病理解剖学的検査および病理組織学的検査などを行います。得られた結果を総合的に判断し、試験液中の亜急性全身毒性の有無を判断します

亜急性毒性試験
遺伝毒性試験

医療機器の生物学的安全性評価を行う場合に実施される主な遺伝毒性試験には複数の試験が存在します(下表)。 そのため、既知の遺伝毒性試験や一般毒性試験に関する結果、医療機器または原材料のヒトにおける使用期間や使用条件を考慮して、適切に試験を選択する必要があります。

指標In vitroIn vivo
遺伝子突然変異細菌を用いる復帰突然変異試験
染色体異常哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験げっ歯類を用いる小核試験

In vitro試験系

遺伝毒性_vitro


細菌を用いる復帰突然変異試験(Ames試験)

検定菌
サルモネラ菌株および大腸菌株
目的
被験物質の遺伝子突然変異誘発性の有無について調べます。
概要
遺伝毒性試験の評価が必要な医療機器については国内および海外ともに実施が義務付けられています。各検定菌が形成する復帰変異コロニーの数を調べます。


哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験

使用細胞
チャイニーズ・ハムスター細胞株、ヒト末梢リンパ球など
目的
被験物質の染色体構造異常、数的異常誘発性の有無について調べます。
概要
細胞分裂中期像を観察することにより、 被験物質の染色体構造異常誘発性と数的異常誘発性を調べます。


In vivo試験系

遺伝毒性_vivo


げっ歯類を用いる小核試験

動物種
マウスあるいはラット
目的
被験物質の生体内における染色体異常誘発性の有無について調べます。
概要
通常、in vitro遺伝毒性試験において陽性が得られた場合に実施します。骨髄あるいは末梢血中の赤血球を用いて実施され、小核を有する細胞の出現率を調べます。

発熱性物質試験

発熱性物質試験とは、微生物由来の発熱性物質に汚染されていないことおよび発熱反応を起こすような溶出物が存在しないことを確認するための試験です。

試験法

☆エンドトキシン試験
☆発熱性物質試験


発熱性物質


医療機器ガイダンスと試験法

発熱性物質
発熱性物質試験単独での実施であればJP、USP、EPのどの試験法でも可能です。同時に実施する試験が準拠するガイドラインや申請先を考慮して試験法を選択します。


本試験のフロー

発熱性物質


作業工程はJP、USP、EPそれぞれ試験法により差はありませんが、実施内容が異なります。詳細につきましては、お問い合わせください。


体温推移による判定例

発熱性物質

埋植試験

目的
体内植込み機器または原材料の局所への影響を評価する試験です。埋植材料の材質、表面性状、または分解過程などによって、周囲組織に引き起こされる組織反応の種類と程度を評価します。
概要
医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について(薬生機審発0106第1号)や Biological evaluation of medical devices - Part 6:Tests for local effects after implantation (ISO 10993-6)に従って実施します。
埋植部位は臨床適用部位に近い組織とし、例えば筋肉内、骨内、皮下などがあります。埋植期間は臨床適用期間を超える必要はありませんが、 ヒトにおける埋植反応を予測し得る期間を設定します。動物は製品の形状・大きさ、 埋め込み数や動物の寿命も考慮して設定します。 評価は、試料周囲組織および試料の肉眼的観察、試料周囲組織の組織学的観察を行い、有意に強い組織反応がみられた場合、陽性と判定します。
使用動物種
マウス、ラット、モルモット、ウサギ


筋肉内埋植の病理学的検査
埋植


骨内埋植の病理学的検査
埋植


皮下埋植の病理学的検査
埋植

血液適合性試験

どんな医療機器や原材料であっても血液に接触させた場合、血液へ何らかの影響を与えます。しかし、多くの既存医療機器が大きな副作用を起こさずに使われていることからも、 血液への影響には許容範囲が存在すると考えられます。血液適合性試験は、医療機器や原材料の血液に与える影響が許容レベルであることを調べる試験です。


血液適合性試験の構成

溶血性試験以外の血液適合性試験は、ガイドラインに試験方法の具体的な記載はありません。血液適合性試験を実施するためには、 ①ISO 10993-4 Amendment1のTable 1とTable 2を参考に血栓形成、血液凝固、血小板、 血液学的項目、補体系の5つの試験項目(test category)から当該機器に必要な試験項目を選択します。 ②いずれの動物種の血液を用い、どのような試験系(in vivoex vivoin vitro)において医療機器を血液と接触させるかを考慮しつつ、 選択した試験項目を評価するための評価項目(evaluation method)を選定します。 ③試験試料の臨床使用条件を考慮しながら試験系を設定し、既存医療機器を対照物質として試験試料と同条件で試験します。 結果は対照物質が示した評価項目の変化に対する試験試料の変化を相対的に評価します。弊所ではGLP適用下、ヒトの血液を用いたin vitro試験系での血液適合性試験を実施しています。


血液適合性


血液適合性試験実施例

カテーテルの血栓形成の評価試験の実施例を以下に示します。血流を考慮したin vitro試験系を用い、血液凝固の亢進と血小板の活性化を指標として血栓形成のリスクを対照物質と比較評価しています。


血液適合性


溶血性試験

溶血性試験
溶血性試験は血液適合性試験が必要とされる全ての医療機器に要求される試験です。弊所では、医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方について (薬生機審発0106第1号)の別添に記載されている方法や ASTM F756 Standard Practice for Assessment of Hemolytic Properties of Materials*の方法で溶血性試験を実施しています。


*Biological Evaluation of Medical Devices - Part 4 Selection of Tests for Interactions with Blood(ISO 10993-4)およびUse of International Standard ISO-10993, “Biological Evaluation of Medical Devices Part 1: Evaluation and Testing” (Draft Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff) に溶血性試験方法として引用


血液適合性
抽出率確認試験

医療機器から抽出される物質の量(抽出率)を調べる試験です。


抽出率確認試験
医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について(薬生機審発0106第1号)では、 ポリマー樹脂を含む原材料で製造・構成された医療機器について感作性試験および遺伝毒性試験を実施する場合、 できるだけ抽出率の高い溶媒を選択すること、抽出物が得られるか、得られないかを確認することが推奨されています。そのため、 抽出率確認試験を行い、その結果をもとに試験に用いる抽出溶媒を選択します。
抽出率確認試験

その他の医療機器試験

試験項目

  • 日本薬局方に準拠した医療機器
    容器、包装材料の試験、プラスチック製医薬品容器試験、輸液用ゴム栓試験
  • 規格基準(JIS等)に準拠した医療機器
    容器、包装材料の試験、滅菌済み輸液セット基準(JIST3211)、滅菌済み注射筒基準(JIST3210)、ISO18369に基づくコンタクトレンズの抽出可能物質試験、 金属系生体材料の溶出試験(JIS T0304)、歯科材料のJISに基づく各種化学的試験
  • その他
    ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請にかかる試験


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