
反復投与毒性試験の目的
反復投与毒性試験は、医薬品、化学物質、または医療機器が体内に繰り返し投与または接触することによって生じる毒性影響を明らかにするための試験です。
マウス、ラット、ウサギなどの実験動物に対して、一定期間(14日間〜1年間)連日投与または医療機器を埋植し、さまざまな生理学的および病理学的変化を観察します。
この試験の目的は、繰り返し投与により現れる毒性の種類や程度を把握するとともに、毒性が発現しない用量(NOAEL: No Observed Adverse Effect Level)や、反応そのものが見られない用量(NOEL: No Observed Effect Level)を特定することにあります。
これにより、安全な使用範囲やリスク評価に必要な科学的根拠が得られます。
また、医療機器では、試験検体から抽出した抽出液中、あるいは試験検体そのものに全身毒性を有する物質が存在しないことを確認します。
試験の実施期間と設計
反復投与毒性試験は、被験物質の種類や使用目的、規制要件に応じて期間が決定され、一般的には以下のような日数で実施されます。
- 14日間(予備毒性試験)
- 28日間(亜急性毒性試験)
- 90日間(亜慢性毒性試験)
- 6か月〜1年間(慢性毒性試験)
それぞれの試験では、複数の用量群(高用量、中用量、低用量)と対照群を設けて投与し、観察項目としては、体重、摂餌量、血液学的・生化学的検査 、臓器重量、病理組織学的検査などを行います。
試験後には回復期間を設けることもあり、投与を中止した後の毒性の可逆性(回復可能かどうか)や遅延性(時間が経ってから出現する毒性)の有無も評価対象となります。
反復投与毒性試験の対象となる品目
反復投与毒性試験は以下のような品目に対して実施が求められます。
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新薬候補物質の非臨床安全性評価として不可欠な試験です。
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長期使用または体内留置が想定される医療機器(カテーテル、人工関節、ペースメーカーなど)において、接触材料の安全性確認のために実施されます。
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家庭用品や産業用化学品など、人が継続的に接触する可能性のある製品に対して必要です。
関連する安全性試験
反復投与毒性試験は、以下のような安全性試験と組み合わせて、総合的な毒性プロファイルの評価が行われます。
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1回投与による急性反応の有無を確認
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遺伝毒性試験や発がん性試験
長期的な安全性評価を補完するための試験
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生殖発生毒性試験
生殖機能や胎児・次世代の発生・発達に及ぼす影響を調べる試験
試験方法
全身毒性試験/反復投与全身毒性試験(亜急性/亜慢性/慢性)をご覧ください。