2025年10月01日更新
[その他]開所50周年のご挨拶

一般財団法人食品薬品安全センターの秦野研究所は、令和7年10月1日(2025年)に、開所から満50年を迎えました。
過去の10、20、30、40周年の秦野研究所年報を繰ってみますと、10周年記念号には、「10年の歩み」の最初に、石館守三顧問(当時)の「本研究所の誕生とその目指すもの」と、橋本虎六理事長(当時)の「時の流れに任せて」と題した、財団設立と研究所の存在意義に係る詳細が示されています。
またその年表には、財団の必要性にもつながる薬害や公害事案とこれらに対応する行政の経緯が10年余り遡って記載されています。
民間機関でありながらも公的な使命を果たすべきことが示され、科学的にも技術的にも、運営面でも十分に国民の信頼に値することが要望されていると、石館先生は述べておられます。
我々役職員は、石館先生や先人の方々が目標とされていたことを、この機会に見つめなおしてみなければならないと感じます。
石館先生が思っておられた「研究所の誇りは施設の整備や甍の美しさではない。不動の目標を支えるものは研究所員の精神的支柱が健全であるか否かに存する」という言葉と、いつまでも消えないことを希うとして残してくださった本研究所の玄関ロビーに掲げられた精神「INSEQVENTES VERITATEM SERVIAMVS DEO HOMINIBVSQVE」{真実を探求し、神と人とに仕えん(原文はラテン語)}を改めてかみしめ、これからも研究所の業務に取り組んでまいります。
母体である財団法人食品薬品安全センターの設立が許可されたのは昭和45年12月15日(1970年)です。
秦野研究所が業務を開始するまでにさらに5年ほどが経過しました。
研究所には、動物の飼育施設があり、放射性物質を含む各種の化学物質が使用される等々、建設場所の選定においては、大変なご苦労をされたと聞いています。
昭和も40年代に入ったころから、日本は高度経済成長といわれる時期に入り、日本が急速に立ち上がったことも影響し、各種の公害事案や薬害問題等々があり、化学物質等を取り扱う施設に懸念を覚えることもやむを得ない時代であったと思います。
神奈川県秦野市および近隣の住民の方々のご理解、ご協力が得られて、現在の地に根を下ろすことができたといいます。
開所から50年を迎え、開所時とは異なり、弊所で実施した試験結果も含めて、本邦はもとより、海外各国においても医療等に使用される医薬や医療機器はもちろん、各種の化学物質の安全性データが相互に利用されるのは至極当たり前の時代となっています。
試験方法も動物を用いない代替法と呼ばれる手法が広がってきて、弊所でも次々と実施に移しています。
一般財団法人食品薬品安全センターの秦野研究所にて、我々も視野を広く持ち、これからも化学物質が使用される多種多様な領域での安全性を担保するために日々努めてまいります。
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
(秦野研究所HP掲載「開所50周年記念年報」原稿から一部採録。50周年の関連資料等をご覧いただくことができます。)

一般財団法人食品薬品安全センター秦野研究所は開所50周年を迎えました。
開所より、食品、薬品、化学物質等の安全性試験・検査を公正に行うとともに安全性試験法の開発など、安全性に関する種々の研究を行ってきました。
当センターは、公益事業として1997年より食品衛生検査の外部精度管理調査を開始しました。
本調査事業は検査の信頼性を確保する手段として重要であり、全国約600の試験検査機関が参加しています。
また当センターでは、医療機器の生物学的安全性試験に用いる標準材料(対照材料)を国内外の研究施設に頒布する事業を1996年より継続的に実施しています。
この対照材料は細胞毒性試験を実施する上での比較基準として医療機器ガイドラインやISO10993-5、-12において使用が奨励されています。
現在、細胞毒性試験のほか、刺激性試験、埋植試験、溶血性試験用の対照材料も頒布しています。
いずれの事業も試験検査の信頼性を確保するために非常に重要であります。
開所50年、これらの事業がスタートして約30年の節目を迎えました。
今後、我々はこれらの事業を維持し、高品質の精度管理試料と対照材料を提供するよう努めてまいります。

1975年に業務を開始した当センターは、医薬品GLP基準が施行されて間もない1985年にはGLP適合性調査(当時は査察)で評価Aを取得しています。
また、医療機器GLP省令が制定された翌年の2006年には医療機器GLPの査察で同じく評価Aを取得しております。
その後継続して現在まで医薬品および医療機器のGLP施設の適合を維持していることは、当センターが信頼性の高い安全性試験を実施していることの証です。
近年、GLP試験を取り巻く環境は大きく変化しており、科学技術の進展と国際的な規制調和の流れを受けて、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は安全性試験の信頼性確保のため、データの完全性(Data Integrity)を要求しています。
当センターでは、GLP研修会等を通じてGLPの最新動向を常に捉え、試験責任者を中心としてGLP試験に携わるすべての職員が信頼性の高い試験を実施する体制の構築に取り組んでおります。

食品薬品安全センター秦野研究所は、本年、開所50周年という大きな節目を迎えました。
私自身も30年にわたり当センターとともに歩み、その変遷を間近で見届けてまいりました。
入所当初は、ビーグル犬をはじめとする大型動物を用いた医薬品の一般毒性試験に従事しておりましたが、時代の変化とともに医療機器の安全性試験へと主軸が移り、現在ではげっ歯類やウサギなどの小型動物が中心となっています。
さらに近年は、動物を用いない動物実験代替法にも携わるようになり、新たな代替法試験のバリデーション試験や当センター内への新規試験導入にも関わるようになりました。
外に目を向けると、安全性試験の手法として、in vitroやin chemicoに加え、in silicoといった動物を用いない評価法New Approach Methodologies(NAMs)の活用が進み、それらを総合した次世代リスク評価New Generation Risk Assessment(NGRA)の研究も盛んに行われております。
安全性試験の手法についても大きな転換期を迎えているのかもしれません。
これまで支えてくださった関係各位に深く感謝申し上げるとともに、私たちは今後も社会の信頼に応え、より科学的かつ倫理的な試験体制の構築に努めてまいります。

近年の医薬品製造においては、GMP省令に記載されている「承認事項の遵守」が重要視されています。
これは、医薬品の品質低下を防止し、医薬品の品質に対する信頼を回復するための取り組みとも言えます。
当センターでは、20年以上にわたって外部試験検査機関として医薬品の安全性および有効性の品質管理を支援し、多くのお客様からご愛顧を賜ってまいりました。
私たちは製品ごとに標準操作手順書を整備し、品質管理試験のご依頼を受けてから成績書の発行までを迅速かつ正確に行える体制を整えております。
最近の20年間に24000件を超えるGMP試験を実施いたしました。
この間に培ってきた技術を用いて日本薬局方(JP)、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、中国薬典、ロシア局方をはじめ、各社独自規格に基づく試験法にも柔軟に対応してまいりました。
これからも当センターは、お客様との信頼関係を深めていき、現状に満足することなく、技術向上と持続的な改善を目標に全力で取り組んでまいります。